
ご自身やご家族の介護について、不安を感じることはありませんか? もしそうなら、この一冊があなたの心強い味方になるかもしれません。予約が取れないと話題の介護施設「くろまめさん」を運営する稲葉耕太さんの著書『介護の大ピンチ解決します』(KADOKAWA)。この本では、介護の中で直面する予期せぬ「大ピンチ」に、どのように向き合い、乗り越えていくかのヒントが具体的に紹介されています。稲葉さんのユニークな「めっちゃ笑える介護!」という視点を取り入れることで、日々の介護が、きっと今よりもっと心穏やかで、笑顔の多い時間へと変わっていくはずです。
※本記事は稲葉耕太(くろまめさん) 著の書籍『介護の大ピンチ解決します』から一部抜粋・編集しました。
お母さんは座ってて
僕らより圧倒的に人生経験が豊富なんです。頼って教えてもらって、やってもらったほうが得ですよ
一般に、介護する側がされる側より圧倒的に足りていないものがあります。それは、人生経験。お年寄りはたしかに僕ら若い者と比べると体力や、生活全般での機能は衰えているかもしれない。だけど人生経験に裏打ちされた知識には、かなわないものがあります。
うちのスタッフのサブローくんは、お年寄りの力を引き出す介護の仕方がとても上手なんです。
くろまめさんには食事作り専門のスタッフはいません。僕ら介護者とお年寄りが一緒にごはんを作っています。サブローくんはうちで働くまで自炊した経験がなかったそうで、あまり料理は得意ではないとのこと。だけど(だから?)、どんどん質問をしていきます。
「だし汁ってなんのことですか?」
「みりんって、どんなふうに使うんですか?」
おばあさんたちに尋ねては、「じゃあ、やってみてくださいよー」と食事作りに引っ張り込んじゃう。すると向こうは、仕方ないねえという感じでサブローくんに料理の基本を教えています。
畑で野菜を収穫するときも、そう。農業をやっていた方に「この大根、もう引っこ抜いていいですかねー」と尋ねては「いやまだ早い」とか「葉っぱの色がこうなったら収穫どき」と教えられています。
みなさん、どこか嬉しそうにサブローくんにアドバイスしながら、料理や畑仕事を共にやっています。
もしかしてサブローくんは「教えてください」という形をとって、お年寄りの方々とコミュニケーションをとっているのではないか? 僕はある日、サブローくんにそれとなく聞いてみたら、
「いや、そういうのぜんぜん考えてないんで」
という返事が来ました。そうか、天然だったのか......と思った次第でした。やはり天然は強いですね。