毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今回は「りんの笑顔の裏にある切実さ」について。あなたはどのように観ましたか?
【前回】がん告知を巡る夫婦の思いに向き合うりん(見上愛)。「正しさ」の外側で彼女が手を伸ばした「嘘」
※本記事にはネタバレが含まれています。

田中ひかる著『明治のナイチンゲール大関和物語』(中央公論新社)を原案とするオリジナル作品で、見上愛、上坂樹里がW主演を務めるNHK連続テレビ小説『風、薫る』。第15週「差し出せぬ手」は、前週にりんが山本の背をそっと押した手が、今度はどこにも差し出せなくなる一週だった。手を伸ばすことこそ看護だと信じてきたりん(見上愛)が、その手を失っていく。看護とは何かという、この作品が問い続けてきた主題が、いちばん重い形でりんに返ってくる。
前週、りんの手を借りて病院を抜け出した山本(本田大輔)は、妻テイ(伊勢佳世)のもとへ帰る。手術をして良かった、お前のおかげだ。そう告げるのは、それを勧めたテイに悔いを残させないためだ。「いっそこのまま一緒に」と漏らすテイに、お前が生きていてくれれば、あの世から眺めて楽しめる、とおどけてみせる。だが、口がきけなくても、寝たきりでもいい、1日でも長く生きてほしいというテイの願いを聞いて、山本は自分から、もう一度病院で診てもらう、とりんに申し出る。「またな」「またね」。そう交わした挨拶に、次はなかった。