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「親孝行できたかな」積年の母の夢をかなえた「二人きりの成人式」。母の涙を今でも覚えています<後編>

  • 「35年前の私の成人式の話です。当時、父は失踪し、兄や姉も不在で母と2人だけで過ごしました。多くの人たちは地域の会場で成人式を祝うのでしょうが、振り袖姿のまま旅行へ出かけました。着物の帯の息苦しい記憶と、母の涙は今でも覚えています」


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    ■普段泣かない母が涙を流して...


    ホテルに着くと、ホテルの庭園で随分たくさん母に写真を撮られました。


    しっかりと帯を締めてもらったので、昼食はあまり食べられないし、息が苦しく、もう疲れはピークに達していました。


    部屋で着替えた時には、もの凄い解放感を感じる事ができました。


    その後は2人で温泉に入り、ゆったりとした気持ちで夕食の時間を待ちました。


    そして、母がどれほど私の成人式を楽しみにしていたかは、夕食の時に知ることができたのです。


    夕食はホテルの大ホール。中央のステージではバンド演奏が入り、ハスキーな声の歌手が素晴らしい歌声で歌っていました。


    そんな音楽を聴きながら、正面に座っていた母に話しかけようと振り返った時、母は目にいっぱい涙をため、私を見つめていたのです。

    私は気付かないふりをして母に話しかけましたが、泣いたことのない母の涙にビックリしました。


    成人式に着た着物は、色も柄も帯も私の好みではなく、着ている時の帯の苦しさが記憶に残っているのですが、それと共に、母の涙が一生の記憶として刻まれました。


    母がどのような思いで成人式を楽しみにしていたのかは分かりませんが、母が喜んでくれたのならそれで嬉しく思います。


    その後、母は何度も成人式の写真を引っ張り出してきて、色んな人たちに見せて楽しんでいました。


    ※健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
    ※記事に使用している画像はイメージです。

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